③多言語で綴られた日本の物語
ちりめん本は、明治時代に日本を訪れた外国人の知識人たちを深く虜にしました。その背景には、当時の超一流の文化人たちが名名を連ねる「国際共同プロジェクト」としての側面がありました。単なる「可愛らしいお土産品」という枠を超え、日本文化を真剣に探究し、正しく海外へ紹介しようとした翻訳出版物としての高い志が込められていたのです。
展開された言語は、主要な英語、フランス語、ドイツ語に留まらず、スペイン語、ポルトガル語、オランダ語、イタリア語、さらにはロシア語まで、実に計10言語に及びますが、全ての物語が一律に全言語で刊行されたわけではなく作品毎に言語が選定されています。
掲載されている物語は、主に日本の昔話や民話が中心です。特に、海外の方々にも理解しやすく、日本の文化や独特の道徳観が伝わりやすい題材が厳選されました。その他にも、万葉集、和歌、歌舞伎、落語、雛祭りや端午の節句といった年中行事、情緒あふれる風景、さらには俳句など、多岐にわたる題材が取り上げられています。
これらの物語は単に翻訳されただけではなく、ちりめん本ならではの細やかな気配りが施されています。 異文化の人々にも物語の本質が伝わるよう、原文よりも簡潔で分かりやすい文章に再構成され、複雑な表現を避けながらも、その魅力を損なわないよう配慮されました。
そして何より、文章に寄り添うように挿入された色鮮やかな木版画が、ちりめん本の世界観をより豊かに彩っています。